文芸誌って堅いイメージ? 洒落ていたりポップカルチャー豊富だったり、意外と面白いんです。
小説やエッセイ、ルポや書評……。なにか新しいものを読みたいと思った時に、手に取るのは本だろうか。私は割と文芸誌を買うことが多い。
遡れば、私が初めて文芸誌を手に取ったのはこの『yom yom』(新潮社)だった。いまから10年近く前、旅先の旅館の蔵書コーナーに一際目立つ色とりどりの背表紙を見つけ、なんか可愛いなとパラパラめくってみてギョッとした。
「誰かがスプレーで落書きしたのかな?!」と一瞬思ったが、なんとそれはデザインだった。当時の『yom yom』のアート・ディレクションを手がけていたのは大貫卓也さん。大貫さんは自身の作品集『Advertising is』で『yom yom』を「“読む”楽しさを布教活動するような、見たこともない文芸誌」「おじさんの文芸誌ではなく、女の子が電車の中で読みたくなる宝物みたいな文芸誌」と書いている。作家陣も錚々たるメンバーで、中身はすべて書き下ろし。「気になる作家の活動を現在進行形で追える文芸誌って楽しいな」と、まさに私は布教されたひとりだった。
それ以来、書店やSNSなどで色々な文芸誌情報をチェックするようになった。最近好きなのは、季刊誌の『小説TRIPPER』(朝日新聞出版)。毎号、フォトグラファーの奥山由之さんの写真を使った表紙デザインを楽しみにしている(実はタイトルのロゴデザインも毎回違っている)。アート・ディレクターは大島依提亜さん。
『ユリイカ』(青土社)は昨年2019年の11月号でシンガーのビリー・アイリッシュを特集していた。昨年大幅にリニューアルした『文藝』(河出書房新社)は2019年冬号で日本語ラップについての特集をしていたし、音楽やポップカルチャーを言葉の視点で考察するのも最近の面白い流れに思える。
いまの楽しみは、12月7日に発売される『新潮』(新潮社)1月号の創作特集。Penでも過去に取材をしたことのある作家の方々の新作が読めるなんて! この年末年始はあまり出かけることもできなさそうだが、家に籠って文芸誌を読みながら新たな作家や世界に出合うには、いい機会となりそうだ。(編集KA)
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